認知症、精神障害、知的障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが困難な場合があります。
また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。例えば次のような場合に成年後見制度が利用されます。

  • 1人で暮らしている母が訪問販売で必要のないものを買ってしまう。
  • 身寄りがないので、将来自分が認知症になった場合に専門家に財産管理等をやってもらいたい。
  • 子供が重い知的障害を負っているので、自分たち両親が亡くなった後が心配である。
  • これまで経営してきたアパートの管理をお願いしたい。

今、元気で、判断能力に問題がない場合、将来に備えて、任意後見契約制度を利用することができます。具体的には、ご本人様の将来設計・ご希望に沿って、以下の契約を組み合わせて締結して財産管理を行います。

見守り契約

今、元気で、判断能力に問題がない方が対象です。
ご連絡をとったり、実際にお会いしたりして健康や生活の状態に変化がないか見守ります。

任意代理契約(財産管理契約)

今、元気で、判断能力に問題がない方が対象です。
契約に定めた委任事務を行います。

任意後見契約

今、元気で、判断能力に問題がない方が対象です。
判断能力が衰えた時点で、あらかじめ定めた任意後見契約における後見事務を行います。

死後事務委任契約

今、元気で、判断能力に問題がない方が対象です。
死後の身辺整理やご葬儀の手配等あらかじめ定めた委任事務を行います。

遺言

今、元気で、判断能力に問題がない方が作成します。
遺言書に従い、遺言執行者や相続人の代表者に財産を引き渡します。相続人がいない場合には、裁判所に相続財産管理人を選任してもらい、相続財産管理人に引き渡します。

今、既に判断能力が衰えている場合、法定後見制度を利用することになります。具体的には、判断能力の程度に応じて以下の申立てを裁判所に行い、選任された後見人・保佐人・補助人が本人の利益のために、本人を代理したり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。

後見

判断能力が欠けているのが通常の状態の方が対象です。
裁判所に選任された後見人が、本人の利益を考えながら、本人を代理したり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。

保佐

判断能力が著しく不十分な方が対象です。
裁判所に選任された保佐人が、本人が自分で法律行為をするときに一定の行為について同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。なお、裁判所の審判によって特定の法律行為について代理権を持つこともできます。

補助

判断能力が不十分な方が対象です。
裁判所に選任された補助人が、裁判所の審判によって特定の法律行為について同意権・取消権・代理権を持ち、それを行使することで、本人を保護・支援します。

私ども司法書士は、後見開始申立てを裁判所に提出する書類を作成したりする一方で、司法書士自身が後見人となることで制度の一端を担っています。
将来のことを考えて制度に関心を持たれている方や、すぐに法定後見を利用する事態にある場合にはご相談ください。

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